僕の置き場所。

誤字脱字の激しい小説擬です。

無名の鬼(仮)①

 

ー…あなたが、鬼だったら良かった。


雨音が、耳元で冷たく響いた。
しかし、空気は夏背負った、季節が荒々しさを秘め、統べている。
雨季の退屈で気怠い雨が頬伝う。 
無論、私は室内で雨が躰を濡らす事などは無く、スプリングの効いた、シングルより少し狭いベッドに横になりながら、誰も居ないこの部屋で突然、滴が私の頬濡らした。
唇の間を抜け酷く塩っぱい。何故、涙が降ってきたのか原因は判らない。
まあ、ただ、虚勢を張った迄に過ぎないが、原因とする事例を紙に書き連ねれば、幾重もの薄く張りのある紙が鋭角に私を捕らえ切り傷を与え、チタニウムホワイトの様な非情なまでの白色を、己の赤色で染める愚行になってしまう。
見えない線から突如として現れる、膨みを持った赤、それは、時として自己の肯定心を具現化させる1つの手段となる。
愚行と言う言葉を使ったが、あらゆる自傷事態に悪などないのだ。


ただ、その傷で生きていける。

そんな人間もいると言う事実だけを知ってくれただけで今晩は有り難い。
そして、重ねて言うと、その場合、私は独りで無ければいけない。
所謂、一般的な、正しさ定理でこの行いを悲しんで欲しくないのだ。
綺麗事を並べたが、どこまでも無責任であり続ける様は、夏のやってくる浮かれ気配に揉み消して貰う。
夏が嫌いで耐え忍び生きるのだから、これくらいおまけして貰えばいい。
だから、私は何が何でも人を愛さず、どこまでも独りで、無責任に己の生死を己の手の内に転がしながら必ず独りで人生と決別すると思い直しているのだ。

 

ただ、今晩は、鬼がチラつく。
何錠か噛み砕きケミカルで口内と、それさえ感じさせない、感情が心を喰らう。

 

喰らう、鬼が出た。

 

こんな出来損ないの深い夜に気付いた、鬼の話をしよう。